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年代記




06.29.2025
JOURNY | ZURICH 3



チューリッヒの中心部から約15分ほど。



本日はギャラリー業務です。
前日にピックアップした作品を中心に細いコンディションチェックと撮影を行います。




CP-SANDOZ. Charlotte Perriand ca.1968


P!GALERIE GLASSHOUSE Ⅰ+Ⅱは、総面積460㎡のギャラリースペースです。
私たちのコレクションは、この空間で保管・展示されています。
この空間はいつもそれぞれの作品たちが放つアウラによって静かな緊張感に包まれています。




写真奥:CP-BAHUT-4 Charlotte Perriand ca. 1958, France, Galerie Steph Simon
左:MF-TORO Miguel Fisac ca. 1950 / WG-LOOP Willy Guhl ca.1954
中央:PJ-L-09-A Pierre Jeanneret ca. 1960 Caned bed usable as coffee table
右:PJ-SI-59-A Pierre Jeanneret ca. 1955 / PJ-SI-59-D Pierre Jeanneret ca. 1955 Kangaroo chair




MF-TORO Miguel Fisac ca. 1950




WG-LOOP Willy Guhl ca.1954




PJ-L-09-A Pierre Jeanneret ca. 1960 Caned bed usable as coffee table








PJ-SI-59-D Pierre Jeanneret ca. 1955




PJ-SI-59-A Pierre Jeanneret ca. 1955




Office chairs with Boumerang table
PJ-SI-28-A Pierre Jeanneret ca.1955-1956 Arm chair with floating back seat /  PJ-SI-28-D Pierre Jeanneret ca.1955-1956 Arm chair with L-shape King office chair
LC-PJ-TAT-14-A Le Corbusier /Pierre Jeanneret ca.1963-1964
Boumerang table




PJ-SI-28-A Pierre Jeanneret ca.1955-1956 Arm chair with floating back seat








GR-STELTMAN CH. Gerrit Rietveld before 1971, designed in 1963




PJ-TB-04-A Pierre Jeanneret, Charlotte Perriand ca.1952-56, 1960 Round side table / LC/PJ-SI-42-A Pierre Jeanneret, Le Corbusier ca. 1955 High Court sofa chairs with Wool upholstery. BENI OUARRAIN Middle Atlas, Morocco ca.1960




CP-BAHUT-5 Charlotte Perriand ca.1950, France, Galerie Steph Simon
JP-STANDARD Jean Prouvé ca.1950, by Les Ateliers Jean Prouvé / PJ-BU-19-A Pierre Jeanneret ca. 1960 Rare administration desk.




CP-FORME LIBRE, Charlotte Perriand ca. 1957, Solid Mahogany
A. Chetaille for Galerie Steph Simon Air France employee’s building, Brazzaville, Congo




PJ-SI-45-A Pierre Jeanneret ca.1955-1956 Arm chair with X-legs / PJ-SI-45-B 1955-1956 Sofa set with X-legs
GR-ELLING Gerrit Rietveld 1974, designed in 1919. Elling sideboard Painted and stained beech wood
TS-BARTOK Tom Strala 2007-2008 Side table Concrete, reinforcing bars




それぞれの作品には固有の歴史があります。
使用されてきた痕跡や、過去に施された修復の跡もまた、その作品の一部です。
古い修復歴は決して価値を損なうマイナスの要素ではなく、その作品がよりラディカルで、より固有な存在となるための重要な要素です。



時間の層や人の手を経てきた過程が、作品に固有のアウラを与えています。このアウラは、単なる視覚的な印象ではありません。
長い年月の中で蓄積されたパティナ が、その背後にある歴史や人との関わりを可視化し、空間に無形の存在感をもたらしているのです。
私たちは、こうした存在感こそが、作品の本質的な価値であると考えています。



豊かなテクスチャーを備えた木肌は、長い年月を経てコニャック色のような深い色調へと成熟します。

表層を覆う幾層ものオリジナル・シェラックは、現代の均質で無機質なラッカー塗装とは異なり、樹脂本来の半透明性と粘性を活かし、滑らかでありながらわずかな揺らぎを伴う艶を生み出します。
その微細な不規則性は、光の屈折や拡散によって複雑な表情を見せ、素材の奥行きと歴史を感じさせます。

こうした均一ではない質感にこそ、時間の堆積と人の手の痕跡が刻まれ、工業的な仕上げでは決して得られない、作品固有の存在感と一点ものとしての魅力が宿る。
それがオーセンティック作品のみが持つ魅力です。




実際、このような豊かなテクスチャーは、意図的に短時間で再現できるものではありません。
木材の内部にまで浸透する自然な酸化や乾燥、環境の変化、そして人の手による長年の使用が折り重なることでのみ形成されます。

時間の経過は、単なる劣化ではなく、素材にしか刻めない層を与えます。
一様ではない光沢、微細な揺らぎ、深みのある色調、それらはすべて、年月が素材と対話し続けた証です。

この経年の蓄積こそが、工業的な仕上げや模倣では決して生み出せない、唯一無二の価値を作品に宿らせているのです。
時間だけが与えることのできる、この不可逆の美しさが、私たちにとって本質的な価値の証明です。



ただ単に簡素であること。そうした表層的なミニマリズムではなく、何十年という時間の試練に耐えうる、必然性のある形態と構造。
不要なものを徹底的に排し、要素だけが残り、それ自体が形への一つの答えとなっている。
そうして生まれたデザインは、時間と価値、そして時代の変化に耐え続ける強さを持っています。

その強度と持続性こそが、本質的な価値を示すものであり、私たちはそれを「ラディカル・デザイン」と呼んでいます。



PJ-SI-45-B 1955-1956 Sofa set with X-legs




PJ-R-26-A Pierre Jeanneret ca. 1960 Book case for periodicals.




PJ-SI-49-A Pierre Jeanneret, A. Prakash ca.1960-1961 Theater chair




PJ-SI-36-A Pierre Jeanneret ca. 1955 Easy chairs with compass-legs / PJ-SI-36-B Pierre Jeanneret ca. 1955 Sofa with compass-legs
PJ-L-12-A Pierre Jeanneret 1957-1958 Daybed with compass-legs
LC-14 Le Corbusier ca. 1959 Box stool  2 type / PJ-SI-67-A Pierre Jeanneret ca. 1955 One of two only found cube stools




PJ-BU-13-A Pierre Jeanneret ca. 1960 Very rare "curved executive desk"
LC-LU-02-A Le Corbusier ca. 1963-1964 Floor lamp
PJ-SI-06-A Pierre Jeanneret ca. 1953 Early prototype with molded seat




CP-NUAGE Charlotte Perriand 1958, France, Galerie Steph Simon




PJ-R-26-A Pierre Jeanneret ca. 1961 Book case for periodicals
LBB-ARMCHAIR Lina Bo Bardi ca. 1953 Armchair with shaped foot




2004年からミッドセンチュリーデザインの収集を開始したP!GALERIE。
今日では、世界最大級のコレクションのひとつと評されています。








PJ-SI-29-A Pierre Jeanneret ca. 1955-1956 Easy armchair
初期の作品が 持つ迫力。堂々とした存在感を放っています。
パティナがもたらす迫力は、近年物では決して生まれない重みであり、空間に置いたときに放つアウラの正体でもある。
ジャンヌレの意図した合理性と質実さに、年月が加わることで、建築的な存在感が一層際立ちます。
豊かなテクスチャーと生き生きとした木肌はチョコレート色の深みを見せています。
















メゾンレベルのスペシャルオーダーのUphostery を施したPJ-SI-36-A Pierre Jeanneret ca. 1955 Easy chairs with compass-legs












PJ-SI-28-A Pierre Jeanneret ca.1955-1956 Arm chair with floating back seat

私たちのコレクションは単なる家具ではなく、当時の技術的実験や思想が具体化されたものであり、いずれも後年の量産品や改良版が生まれる以前の、最も純粋な段階を示す作品にのみ焦点を当てています。当ギャラリーでは、すべての作品に対して厳密な調査と記録を行い、その由来、仕様、状態について明確に説明できる体制を整えています。コレクションの提示にあたっては、視覚的な美しさだけでなく、その背景にある意義と価値を正確にお伝えすることを重視しています。

ここスイスを拠点に、私たちはミュージアムクオリティの作品を、パリやロンドンのオークションハウス、イタリアのプラダ財団といった欧州各地から、東はオマーン国立博物館、シカゴのオークションハウス、日本のギャラリー、世界中のコレクターのお客様へお届けしております。

皆様。東京のギャラリーだけではなく、一度スイスのP!GALERIEまでぜひ一度お越しください。


P! GLASSHOUSE I + II
Florastrasse 12
8953 Dietikon
Switzerland
By appointment only


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